分子栄養学治療の流れ
分子栄養学の治療を行う場合の流れについて説明します。
根本になる病名、病態を把握する
私の場合、分子栄養学的アプローチ別に疾患を3群に分けています。
「疲労系」「免疫系」「精神神経系」です。
「疲労系」はその名の通り、疲労を主訴とする疾患。
「免疫系」はリウマチやアトピーなど、通常ステロイドが治療に用いられる疾患。
「精神神経系」は、統合失調症、うつなど神経伝達物質が問題になる疾患です。
最初にすることは、患者さんの病態の主原因が3つのうちのどこにあるのかをみつけることです。
「免疫系」「精神神経系」の疾患は、ほとんどの場合すでに病名が決まっています。
原因不明と言われている場合、私の経験では多くが疲労系の疾患です。
疲労系は細胞のミトコンドリア機能の障害であり、臓器を超えて様々な症状が起きてきます。
正確な診断のためには、臓器単位の考え方のみで疾患を絞り込むのは難しく、細胞機能や全身状態を同時に考える、「俯瞰的なものの見方」が必要です。
だから「疲労系」の疾患を疑ったら、ミトコンドリア機能を評価すると同時に、疲労を起こしうる疾患の鑑別診断をしていくことが重要になります。
また、病名がすでにはっきりしている場合でも、その病名が患者さんの病態をきちんと表しているか確認する必要があります。
例えば、免疫系の疾患でも、免疫細胞のミコトンドリア機能が落ちていることが主原因になっている場合もあります。
治療のフレームワーク(考え方の枠組み)をつくる
フレームワークとは、治療の考え方の基本になる枠組みの事です。
・同じ疾患群(病態)には共通の治療アプローチがある
・それぞれの治療アプローチには、複数のテクニックの組み合わせが必要である
・それぞれのテクニックは、基礎知識の上に成り立っている
という考え方を図にしています。
左から順番に疾患群、治療アプローチ、テクニック、基礎知識です。
左は具体的な病名、治療の話、右は抽象的な概念の話です。
細胞の機能を高めるためには、状況に応じて様々な治療アプローチや、治療手段(テクニック)を必要とします。
使い方は以下の通りです。
① 患者さんの病気の系列を決める
→すると、基本治療方針(アプローチ)が大体きまります。
② 基本アプローチを行うのに必要なテクニックを決める
→問診、診察、検査結果から必要なテクニックを決めます。
③ 治療テクニックを使う順番を決める
→通常は体への侵襲が少ないものから順番に行っていきます。
疾患群の説明
病態の本質は、人間を構成している細胞の機能にあります。
だからこの図では、細胞という観点から病態を
「疲労系」「免疫系」「精神系」の3つにわけています。
一人の人が複数の病態を持っている場合もあります。
病態が把握できれば、基本の治療方針がおのずと決まってきます。
なぜなら、細胞レベルで考えると、同じ系列に属する疾患は同じ細胞の部位の働きが低下しているからです。(例えば、疲労系疾患はミトコンドリアの働きが低下しています。)
同じ系には共通の病態があり、それに対する共通の治療アプローチが存在します。
例えば、「疲労系」には、慢性疲労症候群,副腎疲労,甲状腺機能低下症などが含まれますが、これらに対しては、ミトコンドリア機能改善が共通アプローチです。
もちろん、それが治療の全てではありません。
それぞれの病態に応じて個別にやるべきことはあります(例えば慢性疲労症候群なら感染に対する対策)が、いずれにしても、疲労系に対してはミトコンドリアアプローチが必須なのです。
疾患群と治療アプローチは常にセットです。
疲労系疾患の症例 →
分子栄養学のフレームワークの全ての要素を学ぶなら分子栄養学実践講座 →
解説
高血圧症や糖尿病などが入っていませんが、これらも厳密に言えば細胞機能低下であり、「疲労系」、「免疫系」に組み入れられます。
ただし、これらの疾患は薬剤での調整が比較的容易であり、生活の質も保たれるので、積極的な栄養療法を受ける患者さんはそれほど多くないようです。
ここでは、標準的な医療での調節がうまくいきにくかったり、薬剤の副作用が強かったり、生活の質が低下しやすいものを中心に構成しています。